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MIT Museum [徒然]

前々から行こう行こうと思ってて全然行ってなかった MIT Museum に行ってきた。場所はMIT のキャンパスと同じく Cambridge。ただし Museum はキャンパス内ではなく、歩いて10分くらいのところにある。Cambridge ってのは Boston から Charles River を挟んだ北側ね。と言っても田舎住まいの俺からすると Cambridge も Boston も同じようなもんだけど。銀座と有楽町みたいな。

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Redline の Central で降り、Mass Ave. を Boston 方向に10分くらい歩いて到着。そんなに大した博物館ではなく、ただのビルです。大人一人 $7.50 なり。

一階はナノテクノロジー、脳科学、宇宙開発、生命科学などの説明展示が主体。その中で面白かったものを二点ほど紹介しましょう。

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まずこれ。有名人8人の写真(?)。知らない人もいるけど。
上の左から二番目、マリリン・モンローに近寄ってみると・・・
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なぜかアルバート・アインシュタインになってしまう。マリリン・モンローに限らず、近くで見ると全員アインシュタインに見えるようになっている。
どういうことかと言うと、この場所で怪死を遂げたアインシュタイン博士の怨霊を MIT の技術力で映像化することに成功した・・・わけではなくて、これはマリリン・モンローの写真の低周波成分と、アインシュタインの写真の高周波成分を合成して作ったものだそうな。だから遠くで見ると低周波成分だけが見えてマリリン・モンローに、近くで見ると高周波成分が良く見えるようになってアインシュタインになるということみたい。それにつけてもアインシュタイン博士の人気は偉大だ。ダリと並んで世界変顔大賞を差し上げたい。

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続きましては宇宙のおはなし。「宇宙飛行の未来」ってんで今後のアメリカの宇宙計画をさらっと紹介するパネル展示なんだけど、そこに書いてあった有人宇宙飛行の目的定義に非常に感心したので紹介したい。超訳な上に少し長いが容赦願います。

なぜ有人宇宙飛行が必要なのか?

スペースシャトルと国際宇宙ステーションの役割、有人飛行範囲の拡大、それらに対する国際的な協力体制などに関連して、合衆国は現在、これまでになく重要な方針を策定するさなかにある。 これらを決定するためには、この究極的な疑問に答えなければならない。 「人はなぜ宇宙へと飛び立つのか?」 宇宙飛行は人類の経験を拡張する場合にこそ、多くの人の興味を惹く。経験とはつまり、新しい活動範囲、これまでにない状況、環境である。

基本的な条件

有人宇宙飛行の目的を考えるにあたって、MIT の SPS Research Group(MIT Space, Policy and Society Research Group)はその目的が満たすべき三つの基本的条件を定義する。
  1. 有人宇宙飛行の目的は、人間が直接そこに行くことでのみ達成されるものでなくてはならない。
  2. 有人宇宙飛行によって得られる利益は、その他の可能な手段を用いて得られる利益を凌駕する必要がある。
  3. 有人宇宙飛行の目的は、人命に対する明らかな危険性に見合うだけのものである必要がある。

第一目的

これらの基本的な条件を満たす、有人宇宙飛行の第一目的とは以下の通り。(注)
  1. 探査・探求
  2. 国威の発揚
  3. 国際社会における国家威信の向上

第二目的

これらはしばしば有人宇宙飛行の目的として挙げられ、そこから利益が得られるものではあるが、それ自身では有人宇宙飛行への投資と危険性を正当化できるものではない。例としては以下。
  1. 科学的調査
  2. 経済効果
  3. 技術開発
  4. 教育的効果
注:第一目的の英文は
  1. Exploration
  2. National pride
  3. International prestige
となっている。二番目と三番目は訳すとどちらも「国家の威信」となってしまうのだが、二番目は国民に対する内向きの訴求、三番目は米国外に対する外向きの訴求と考え上のように訳した。


この後、これに沿ってスペースシャトルの退役、ISS の2020年までの運用延長、月基地建設計画の開始などと具体的な提言を行っているが、長くなるのでこのくらいで。
なお一応述べておくと、MIT は一私立大学なので、これがアメリカ合衆国の国家方針そのものではない(もちろん NASA からお金をもらった上での研究成果を発表しているのだろうが)。ただ最近のニュースを見るに NASA の方針はこの提言にほぼ沿っているので、大きく影響を与えているようだ。

さて何に感心したのかというと、第一に目的定義をはっきりと行っているということ。皆さん承知の通り日本もつつましくロケットを飛ばしたり ISS に人を送り込んだりしているわけだが、その目的をはっきりと定義しているだろうか?宇宙開発といえば大事業だ。金も労力も莫大にかかる。目的を明確に定義しておかなければ、金と労力をどこまでかけるべきかの判断がつかないはずだが、どうもきちんと定義しているようには見えない。

そして更に驚くべきは定義された目的の内容だ。なんと「国家の威信」が三つ中二つを占めている。「基本的な条件」で述べているように、ここに挙げられた目的は時として人命よりも重んじられると考えられているものだ。つまり、国民への意識発揚と国家の威信は、命を賭ける価値のあるものだと言っている。その上で、科学技術の向上や経済効果などは二の次と明確に示している。
最近、「事業仕分け」なる政府予算の吟味が行われ、複数の科学技術的プロジェクトもその対象となったのは記憶に新しい。その席で政府側の人間はプロジェクト側の人間に対し、「これは何の役に立つのか?」という質問をしていた。もしプロジェクト側の人間が「国威の発揚に役立ちます」と答えたらどうなっただろうか?「もっと具体的に」と反論されることは想像に難くない。つまり上で言うところの「第二目的」に議論が落ちていくことになるのだろう。MIT の SPS Group が「それだけでは正当化できない」とバッサリ切り捨てているところに。
もちろん、国家の威信だの胡散臭いと考えることは自由だ。日本はそんなものに価値を置かないというのも結構。しかし、ではなぜ膨大な金をかけて宇宙開発を推進するのかという点について、MIT が示しているように日本の考えを確立すべきだと思う。そしてそれはプロジェクトの人間ではなく、むしろ政治側の仕事なのではないかと思うのだが、どうだろう。
個人的には「国家の威信」で大いに結構だと思っている。特に日本国民に向けての国威発揚は大いに行うべきだと思う。むしろ、自分が帰属する社会・団体・組織に対する誇りの喪失こそが日本の置かれた閉塞状況の原因の一つであり、日米で決定的に異なる強さの差ではないのか。
どうも我々は、戦中軍部が行ったミスリードを真に受けて未だに「愛国心」「国威発揚」は悪であると考えがちだが、全くそんなことはない。そもそも nationalism と patriotism という全く違う概念を「愛国心」という一つの言葉に押し込めていることに何者かの悪意を感じるのだが・・・それについては長くなるのでまた別の機会に。

MIT Museum に話しを戻そう。一階はそんなわけで二階に上がると、ロボティクス、人工知能(この二つは最近融合しているようだが)、遺伝子の働く仕組みなどの展示と、なぜかホログラム芸術作品の展示コーナーがあった。ホログラムで面白いのがあったので写真を一枚。
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コンピュータ基板のホログラムで、基板の手前に虫眼鏡が置いてある。虫眼鏡もホログラムの一部なんだけど、ちゃんと虫眼鏡として機能している!ホログラムは立体的な光の軌跡を記録するので、こんなことができるんだね。
基板が今はなき「Degital Equipment Corporation」製なのは涙を誘いました。

展示はそんなところ。大して広くない、っつーかむしろ小さいので、1~2時間もあれば全部見て回れると思う。全体的に見て、ホログラムや脳科学、人工知能などの展示が多いところを見ると、人間の認知や知性が今の MIT の主な研究フィールドなのかな。

ついでなんで MIT のキャンパスにも散歩がてら寄ってきました。いやー、大学卒業してから結構経つもんで、懐かしいね。(誤解を招く発言)
これが本館っぽい建物。普通に道沿いに建ってる。上の方に「MASSACHVSETTS INSTITVT OF TECHNOLOTY」って書いてあるから、ああ MIT の建物なんだ、って分かる。U が V になってるからラテン語っぽいけど・・・ラテン語でも of は of なの?
mit.JPG

こちらはキャンパス内。体育館かな?こっちは大学っぽいね。
mit_gym.JPG

更についでに、 Porter SQ というところに忠実に日本っぽい定食屋さんがあるのでそこまで散歩。途中にかの有名な Harvard 大学があります。自然科学の雄 MIT と人文・社会科学の雄 Harvard が歩いていける距離にあるってのも面白いね。
harvard.JPG
なんか MIT に比べると、壁とかしっかりあって入りにくい雰囲気。これが establishment というやつか・・・。

このあと定食屋さん(Cafe Mami)でトンカツ定食食べて帰りました。

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